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菅江真澄と白神山地 ~菊池正浩著『菅江真澄 津軽隠れ里紀行』より~

 初めまして。青森市でタウン誌や書籍の編集を行っている、ものの芽舎の佐藤あい佳と申します。

 ものの芽舎では、2021719日に、ものの芽双書第1弾として、菊池正浩著『菅江真澄 津軽隠れ里紀行』を発行しました。今回はこの本の見どころと楽しみ方、そして白神山地について書かれた部分についてご紹介したいと思います。


菅江真澄津軽隠れ里紀行


はじめに。菅江真澄とは?

菅江真澄は宝暦4年(1754年)三河国(愛知県)生まれ。江戸時代後期の旅行家・博物学者です。北日本を中心に旅して歩き、遠くは蝦夷地(北海道)も訪れていますが、特に東北地方で人生の半分以上を過ごしたといわれています(文政12年 1829年、秋田で没)。

真澄は行く先々で多くの旅日記を残しました。これらの記録は『菅江真澄遊覧記』とよばれ、自筆本は国の重要文化財に指定されています。


菅江真澄 津軽隠れ里紀行』の見どころ

 『菅江真澄 津軽隠れ里紀行』では、菅江真澄の足取りの中で、特に津軽での旅に注目しています。

 ここで、執筆者の菊池正浩さんの略歴にふれておきます。菊池さんは、1946年弘前市出身。NHKプロデューサーとしてNHKスペシャル「街道をゆく」や「四大文明」、最近ではBSプレミアムの「英雄たちの選択」など数々の番組を手掛けてきました。

 そうした経験にもよるのでしょうか。菊池さんの文章を読んでいると、書かれている出来事や風景が映像のように頭に浮かび上がり、江戸時代に生きた菅江真澄と、同じ場所にいるような感覚さえ覚えるのです。

 ここで、白神山地に関する記述を一つご紹介しましょう。旅日記「雪のもろ滝」に登場する、暗門の滝でのシーンです。凍てつく雪の山路をたどった真澄は、山働きをしている男たちの小屋に泊まります。たき火に木をくべている様子、食事の準備の様子など、場の雰囲気が描かれた上で、山の男たちの会話が始まるのですが、これでもう、厳しい寒さの中の温かいもてなしの様子が伝わってきます。

なお、火にあたりながら話に耳を傾けていた真澄は、彼らの方言の違いに気づいたといいます。


「『知り申さぬ』と秋田弁でこたえるのは、出羽の国藤琴(西目屋村大秋)から来ている木こりだった。一方『うまやい』(ごもっとも、そのとおりです)と返事をくりかえすのは、真澄たちが来る途中の津軽の大秋(西目屋村大秋)から来たきこりの頭だという。」(P31、菊池)


このほか菊池さんは、菅江真澄が男たちから、暗門の滝で当時の山仕事流し木についての話を聞いている場面なども記述しており、菅江真澄が目の当たりにした当時の生業や風習についても、本書を通じて身近に感じることができます。


巻頭


黄金探し? プラントハンター? 白神山地をめぐる真澄の謎

本書には、ほかにも白神山地と菅江真澄との関わりが登場します。真澄が尾太鉱山の跡地を訪れた話(「外浜奇勝(三)」)や、白神山地に繰り返しアプローチする場面(「外浜奇勝(二)」)など。こうした行動について菊池さんは「黄金探索行」だったのではないか、あるいは「植物の宝庫を予感していたからでは」などと記しています。

本書を手掛かりに、白神山地と菅江真澄をめぐる謎を探ってみても、面白いのではないでしょうか。


おわりに

 本書の後半には、菊池さん執筆の「イザベラ・バード北東北の旅」「津軽観音巡礼」も収録しています。菅江真澄とはまた違った角度からも津軽を眺め、楽しんでいただければ幸いです。

 本書は、青森県内書店、弘前れんが倉庫美術館、秋田県立博物館のほか、Amazonで販売しています。詳しくはものの芽舎までお問合せください。


目次


<書籍情報>

菊池正浩著『菅江真澄 津軽隠れ里紀行』(Amazon

価格:1650円(税込)

発行・問合せ:ものの芽舎 

030-0966 青森県青森市花園1-1-20

TEL017-762-7848FAX017-762-7656

mononome☆andline-two.net (←☆を@にして送信ください)

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